先に読んだ「すきやばし次郎 旬を握る」の数年後に出版された書籍が、この「すきやばし次郎 鮨を語る」だ。「旬を握る」が鮨職人の教科書的一冊だったのに対して、こちらは小野二郎氏のヒストリーを綴った一冊となる。幼少期から現代に至るまでどのような道を辿ってこられたかがよく分かる。この本からよく分かることは、氏がどれだけ仕事に対して手を抜かずまじめに取り組み、そしてミシュラン三ツ星店の称号を持つ今でさえもうまい鮨を提供するために研究、改良に取り組む職人としての意地、心意気だ。出版当時で齢70、一般的には現役を引退し御意見番としてどっしりと居座っているだけでもおかしくない年齢だが、今だ現役でしかも数百貫の鮨を一日に握る。そこには年齢を理由にした妥協などは一切無く、生涯一職人のこだわりが感じ取れて熱い一冊だった。
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